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柳は緑、花は紅

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あたしの一生―猫のダルシーの贈り物
あたしの一生―猫のダルシーの贈り物
ディー レディー, Dee Ready, 江國 香織

誕生日に、わたしの大事なひとから本をもらった。映画とか音楽とかの好みは合ったためしがなかったから、彼が本を手渡してくれたときは正直、まいったなぁ、と思った。私の気に入ったふりを彼は見破ってがっかりするだろう。

でも、読み始めてすぐに、これは「私の本」だということに気づいた。ダルシーは私。あたしの人間は彼。読み終わったとき涙が止まらなくてただただ泣き続けた。悔しいのとも悲しいのとも違う涙を流したのはいったい何年ぶりなんだろう。

泣いている私を彼はぎゅっと抱きしめてあやすように髪をなでてくれる。ああこの人は私の扱い方を分かってる。あたしが何を好きか、どうしてほしいか分かってる。この人はひげのない猫みたいにあたしのことを分かってくれてる。

彼の腕の中で、あたしは絶対的な肯定感、安心感に酔った。だらしなくても、引きこもっていても、弱くても、わがままでも、よくばりでも、あなたは私を愛してくれてるんだと、初めて思うことができた。初めて。

自分が自分でいていいっていう感覚が永く分からなかったのに、少し分かった気がした。世間に出ればまた居場所が分からなくなるだろうけど、一度この感覚を味わったからには徐々に自分の縄張りを広げていけるだろう。

ずっとねこになりたかった。会社を休んで温かい布団に包まれてまどろみながらにゃーお、と鳴いて猫になりきった。彼に話すときも自分のことを「ねこ」と呼んだ。その一方で、だから私はいけないんだ、と思ってた。ねこになりたいから寝てばかりの怠け者になるんだと自分を叱った。

でも今は違う。私はねこになりたい。自分の人生に完全に満足した気高い猫になる。毛づくろいだって頑張って見違えるように美しくなる。私が頑張るとあの人が笑顔になる。あの人の笑顔が私のよろこびになる。
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